目が覚めたら、知らない部屋のベッドで寝ていた。

一体、どうしたのだろうか。 酔っ払って誰かのうちに上がったとか?・・・いやまさか、絶対にそんなことはありえない。 いつもどおり私のベッドで寝たはずだ。ああそうかこれは夢だろうなそうだろうな。 そう思い、もう一度ベッドに潜った。 すると突然、頭上から知らない女の人の声で「さっさと起きなさい!」と叱られ、勢いよく掛け布団を剥がされた。
そこにいたのは、やはり知らない女性。 背が高くてスタイルが非常にいい外人さんで、しかも、超がつくほどの金髪美人。 おお、このお姉さん、外人さんなのに上手に日本語を話せるんだなぁ、と寝ぼけながら思った。 「ほらっ、朝食ができてるから下に降りるわよ」とその美人なお姉さんに急に言われたので、かなり混乱した。 が、ぐいぐいと腕をひっぱられ強制的にベッドから起こされた。 お姉さんについて少し狭い階段を降りていくと、そこには、小さな喫茶店があった。 レトロ調の落ち着いた雰囲気、少し歪んでいる窓ガラスから射す暖かな日差し。 十席もないカウンターと、二台しかないテーブル。 すべてが、ひどく、懐かしく感じた。

何故か、ああ帰ってきたんだ、という気持ちになった。

すると、突然後ろの方から人の気配がした。 気のせいかと思ったらやはりそうでもなく、お姉さんがめんどくさそうに気配がした方を振り返った。
そこにはそのお姉さんと同じくらい背が高く、それなりに美形な青髪の青年が私たちを見て微笑んで立っていた。
「・・・あんた、なにしてんの?」
「僕ですか?僕はこうしてお二人が降りてくるのを、ここでお待ちしていました。」 「あーら待ち伏せしていました、の間違いじゃないの?」 「まぁどっちだっていいじゃないですか。さて、お二人とも、お腹空いているでしょう?朝食にしましょう。」
ふふと笑って、お兄さんがお店の端っこにあるテーブルの方を指差した。椅子に座れ、ということだろうか。 とりあえず二人とも悪そうな人ではないようだと思い、私は木製の椅子に腰かけた。 ぎしっ、と音がなったので少し戸惑ったが二人の表情に変わりはなく、そういう椅子なんだろうなと認識した。

テーブルにはすでに朝食の準備がきっちり3人分できており、美味しそうな匂いがした。 一瞬、私は食べるか否か迷ってしまったがそんなことは無意味だったようで。 お兄さんの「それでは、いただきましょうか」という合図で二人とも普通に食事をし始めた。 私も「いただきます」と言い、目の前にあるトーストをかじった。
まだ温かいトーストを頬張りながら二人を盗み見るが、二人とも大して私のことを気にしている様子はない。 赤の他人が同じ食卓にいるのに、なぜ。 「ちょっと、そこのジャムとって」 「はいはい。あ、ブルーベリーでよかったですか?」 「えぇ」

私は、少ない勇気を振り絞って話を切り出してみた。

「あの・・・、どうして、私がここにいるか、とか、聞かないのですか・・・?」



すると、意外なことに二人は一瞬きょとんとしてから、ふふっと笑ってこちらを見た。

「そういうことは、僕たちから聞くのではなく本人が言いたい時に言ってもらう方がいいと思いまして。」 「・・・あ、でも、気にならないと言ったらウソになるわね。」 そう言って、二人はほほ笑んだ。 何故か、胸が急に暖かくなり、 私も二人と一緒に笑った・・・・・。
紅茶の、暖かい香りが鼻をくすぐった。




・・・・と・・ちょ・・と・・・


ん?



「ちょっと、何あんたぼんやりしてるのよ!あああああこぼれてるこぼれてる!!」

「・・・え、あ、あー、あああああー!!!!

どうやら私は半分寝ていたようだった。 ぼんやりしていたせいだろう、持っているポットから紅茶が注ぎっぱなしになっている。
ティーカップから紅茶が、たくさん、こぼれている。

「す、すみません・・・。せっかく、紅茶の入れ方を教えてもらっていたのに・・・」

「・・・はぁ。まぁいいわ。またやり直しよ。」 「珍しいですね。がぼんやりしているなんて。」 「いえ・・・、実は、夢を見ていました。」 「夢?」 「はい。   懐かしい、夢を。」